むし歯

◎むし歯のできるまで

お口の中には様々な菌が生息しています。この菌がいることで、私達は様々なバイ菌の感染から身を守られているのですが、むし歯や歯周病の原因となる菌は、まさにお口の中に存在します。

私達が普段栄養としている糖類(特に、砂糖)は、ミュータンス菌にとって格好の食材です。彼らは砂糖を分解して不溶性グルカンという、水に溶けず、ねばねばした、自分たちのねぐらを作り上げます。その中で他の菌とともに糖類を分解して生活し、副産物として酸を産生します。この酸が歯を溶かしてゆきます。少し溶けたくらいなら、私達は唾液成分で歯を修復することができますが、ねばねばした「歯こう(プラーク)」のような形で同じところにずっとたまっていてしまうと、歯は治せないくらいにどんどん溶かされていってしまいます。この状態が「むし歯」です。

◎むし歯になるとなぜ痛い?

歯の構造は、歯の痛みを感じる神経線維がありまた歯の管理人と言える象牙芽細胞がある「歯髄」、その外側の「象牙質」、さらにその外側の歯が白く見える部分の「エナメル質」の3層構造です(根の方では、エナメル質の代わりにセメント質があります)。エナメル質は非常に硬い構造を持っていて、むし歯の進行も遅いです。鎧のような役割で、歯の内側への痛み刺激を遮断してくれています。このエナメル質が貫通するほどにむし歯が進行すると、象牙質に至ります。象牙質には細い管が無数に歯髄から伸びてきており、そこに刺激が加わると、痛みの刺激が歯髄まで届き、痛みを感じるようになります。

◎むし歯になったらどうする?

 むし歯菌に居つかれ、周りを酸によって柔らかく溶かされてしまった歯の部分はもう元には戻らず、ただむし歯原因菌の温床となるだけです。むし歯の治療では、基本的にこの悪くなってしまった部分を取り切るところから始まります。取りきって、むし歯によって失われた歯の部分の大きさや形態によって、詰めたりかぶせたりする物の形などを決めて行きます。詰め物やかぶせものをすることで、歯もかめるようになり、残った歯も守られます。むし歯の治療は怖いですが、放っておくとどんどん悪くなる一方(=削る量も多い!)です。早目の治療を心がけましょう!

 ずっと放っておいた結果、歯の根っこのみになってしまった時には、歯を残して使っていくことが難しいことが多いです。こうなると抜歯になってしまいます。

◎根の治療とは?

むし歯が歯の中の歯髄(いわゆる神経)まで達すると、直接刺激が伝わりものすごく痛みます。また、しばらくすると痛みを感じなくなりますが、それは歯髄の細胞が死んだ状態であり、どちらの場合も根っこの中にまで菌が入ってきており、このような状態の歯をまた痛みなく使っていくためにはこれに対する根っこの治療が必要となります。根っこの治療では、根っこの中を消毒して、最後にすき間のないように根の中に詰め物をします。こうして、根の中に出来るだけ菌が残らないようにします。

他にも予防的、便宜的に根っこの治療が必要な場合があります。

◎むし歯治療の後に気をつけること

むし歯の治療をしたところは、その境目にむし歯を作りやすいです。もともとお口の掃除ができていないからむし歯になったので、そこが弱点で又むし歯を作る可能性は高いです。自分の弱点だと自覚してしっかり清掃しましょう。

また、根っこの治療までした歯は、元の歯に比べると弱っているとよく言われます。治療していない歯に比べると、そのうちに根っこが割れてしまうこともよくあります。むし歯で削ってしまった歯は元には戻りませんから、大事に手入れをして無理をせず使っていきましょう。

◎むし歯ではないけど痛い、しみるのは?

多くの人は年齢とともに人のお口の中の歯ぐきは少しずつ下がってきます。歯ぐきが下がると、若いころは隠れていた、歯の根っこの方の象牙質が露出してくることがあり、ここに風や冷水などの刺激が加わるとむし歯と似たような原理で痛みを感じます。いわゆる「知覚過敏」です。この様な症状は壮年期の女性に多いです。特効薬はありませんが、対処法がありますので、お悩みの方は一度ご相談下さい。