★歯周病について3 歯周病への対応

歯周病の治療を始めるにあたっては歯周病の進み具合を知る必要があります。

歯を支えている骨がどの程度あるのかを知る方法として、

 ・レントゲンの写真での骨の状態の確認

 ・細い棒を歯周ポケットに入れ込んで、歯周組織の状態の確認

を行って確認します。歯石を取る際の歯ぐきの反応でもある程度分かります。

進行してしまった歯周病の治療はさまざまなものがあります。

しかし、治療の目標として根本的な考え方は、

「歯と歯ぐきの間のポケットの歯周病原因菌とその住みかをできるだけ取り除く」

「きれいになったポケットが清潔に保ち続けられるようにする」

事だと思います。

さらに、若い頃に比べて歯を支えてる骨の量も少ないですので、無理な力で残りの骨がダメにならないように、かみ合わせにバランスを持たせることが大事です。

歯周病の原因を改善するために

①プラークや歯石の除去

歯の根っこに付いた歯石や汚れ、歯ぐきの内側のポケットの治りの邪魔になる良くないお肉を取り除きます。

場合によってはそのために麻酔の上で歯ぐきを切り開いて、よく見える状態で行う場合もあります。

②過剰な力が一部分に集中しないように

前歯などで、 お隣同士を連結して固定したり、歯が失われたところに入れ歯やブリッジ、インプラント等でかみ合わせを確保します。

噛んだ時の力が、一か所が集中して仕事をせずに、なるべく分散するようにコントロールします。

インプラントを行う場合は、周りの歯の歯周病の状態が良くないと、周囲の歯が動くなどですぐに状況が変化してしまいやすいです。

インプラントやブリッジの治療を行った後に、治療の経過が安定しない原因の一つです。

歯周病が進行している場合は特に、治療の計画にも、治療後の管理にも十分気を付ける必要があります。

③清潔なお口の環境を保つために

健康なお口を維持するためには、最後はご自身のお口のお手入れ(セルフケア)にかかってくるといえるでしょう。

現代ではお口のケア用品も電動歯ブラシ等をはじめ、さまざまに充実してきています。

お口のお手入れをどのような器具でどうすればよいか、わからない方はお気軽にご相談下さい!

歯周病の予防、進行を抑えるには、歯みがきによるセルフケアと、セルフケアで対応できないところを含めた定期的なプロケアを持続することが大事です。

進行した歯周病は治療が困難なことが多いです。

歯周病が進行する前に、予防のセルフケア、定期的な歯のチェックをお勧めします。

★歯周病について2

◎歯周病の原因?

むし歯も歯周病も、原因は歯についた食べかすなどの汚れにお口の中の菌が繁殖してできた菌の集合した「プラーク」が原因です。

むし歯の原因となる菌と歯周病の原因となる菌は、種類も性質も違います。歯周病の原因菌は、空気に触れないような環境で活動し、歯を支えている構造を徐々に壊していきます。

プラークにカルシウムなどが沈着して石のように硬くなったものが「歯石」です。歯石は硬いので、一度作られてしまうと歯ブラシでは取り除けません。

◎歯石を取る理由

歯周病の予防のためによく歯石を取り除く処置を行います。なぜでしょうか?

歯石自体が直接何か悪さをするわけではありません。歯石は非常に取り除きにくいので、歯石の周囲にはプラークが付着しやすくなり、さらに空気に触れにくい環境を菌に提供します。

原因の温床を取り除くために、歯石を取り除くことが大事なのです。

◎歯周病の進行と歯石の関係

歯周病が進行してしまった場合、歯と歯ぐきの境目の溝(「ポケット」)が深くなることが多いです。この時、お口の中を目で見ただけでは、歯ぐきはさほど下がっておらず、十分な歯の支えがあるように見えます。一見するとさして歯は悪くないように感じるかもしれません。実際には内側の骨の支えはだいぶ下がって少なくなっており、外側の歯ぐきが菌に対抗するために腫れあがって壁のように高くなっているだけだったりすることもしばしばあります。深いポケットの中には空気に触れない環境でいっぱいです。このような状態でポケットの中に歯石が存在する場合、歯周病は極めて危険な状態と言えるでしょう。歯周病原因菌にとっては、夢のような環境です。

◎歯周病が進行したときの“傷口”

もしも、歯は失っていないが、お口の中全体的に重い歯周病にかかっている場合、なんと常にお口の中に手の平ぐらいの大きさの傷口を負っていることになります。このような状態が体にとって良くない状態であることは、なんとなく想像できるのではないかと思います。

◎進行した歯周病の治療

お口の中で全体的に進行した歯周病の治療は、かなり厳しくなります。失われた骨の支えは、治せる場合もありますが、治らない場合も多いです。歯を失った場合に、失う前に比べた生活の質の低下や、歯を失った部分の歯を補う治療(入れ歯や、インプラントです)の費用は大きく付きます。頼みのインプラントも、歯周病が重く進行してしまったケースでは固定するための骨が少なく、困難な症例となることも多いのです。

歯周病は予防がとても大事な生活習慣病であるといえます。歯周病は40代、50代60代・・・と年齢を重ねるごとに進行する傾向があります。今は大丈夫でも・・・定期的なメンテナンスを若いうちから習慣づけることで歯周病予防を管理していくことをお勧めします!

★歯周病について1

◎サイレントディジーズ

歯周病はよく、「サイレントディジーズ」と言われます。

子供のころや若いときからむし歯になった人は、歯医者で歯をしっかり磨くように言われて、多かれ少なかれ歯を磨く習慣を身につけます。

世の中とは不公平なもので、子供のころ、若いころからむし歯に苦しむ人たちがいる一方で、どんなに歯を磨かなくても少しもむし歯にならない人たちが存在します。遺伝や免疫などいくつかの原因は考えられますが、生まれつきむし歯になりにくい人がいるのです。このような方は、歯は硬く、ほとんどすり減ってこないことが多いです。

むし歯にならない人は、磨かなくても困らないので、年齢が上がってきても歯を磨く習慣がなかったりします。このような人は、とくに歯周病に要注意です。

歯を磨かなくても若いうちは体の抵抗力も元気なので、遺伝的な問題がなければ重い歯周病となることはほとんどありませんが、年齢が上がるとともに歯周病は徐々に進行していきます。歯医者に行く習慣もなく、痛みもなく、気付いた時には自分の歯が全部揺れていて、歯周病が重く進行してしまっていることがあるのです。それゆえ歯周病は「生活習慣病」であり、また「サイレントディジーズ」、静かに進行する病気といわれるのです。(ただ、世の中やはり不公平で、ごく稀にむし歯にも歯周病にもなりにくい人もいるのですが・・・・・・)

不幸にして歯周病が進行してしまっているとしても、思い立ったが吉日! 気づいた時から歯周病対策を始めていきましょう。

★親知らずについて

親知らずとは、前から数えて8番目の歯のことです。

一番奥の奥歯で、第1大臼歯(6歳臼歯)、第2大臼歯(12歳臼歯)の後ろなので第3大臼歯と呼ばれます。口の中に生えてくる時期も10代後半と遅く、親知らずの名前の由来ともなっています。また、親知らず自体がまったく存在しない人もいます。親知らずがあっても口の中に顔を出さないこともあります。親知らずがあるのかないのかはお口全体のレントゲン写真を取ることでわかります。

現代では親知らずが正常に生えて来ない人も多く、また親知らずがなくても、食事がしにくいなどで困ることはあまりありません。

◎親知らずは抜いたほうがよい?

よく、親知らずを抜いたほうがよいという話を聞きます。なぜでしょうか?

①正常に親知らずが生えている場合

正常に親知らずが生えて、上下でしっかりかんで問題のない場合は、特に親知らずを抜く必要はありません。しかしこの場合でも、親知らずがむし歯になった場合など、一番奥の、物の届きにくい場所のために治療が難しく不確実になるため、抜歯が選択肢となる場合があります。奥まっているために、うまく清掃ができずに不潔となり、親知らずだけむし歯が進むケースもよくあります。

②親知らずが変な方向に生えている場合

変な方向に生えて、お口の中に頭を出しているような場合、あまり歯本来の仕事はしていないばかりか、親知らず周りのお口の清掃が大変だったりします。清掃がしにくい結果、周りの歯をむし歯にしてしまったり、親知らず自体が痛む(「智歯周囲炎」)になったりします。

この、親知らず自体が痛んだ場合、基本的には薬で症状を抑えることが多いのですが、放置してしまうと心臓の周囲にまで膿が落ち込んでしまう場合があり、こうなると命の危険にかかわる事態にまでなってしまいかねません。

そのため、そんなことがないようにあらかじめ抜いてしまったり、一度はれたことがあれば、おさまっているうちに抜歯しておく、という選択肢があるのです。まれに、忙しい肝心な時にものすごい腫れ上がる、というケースがあります。そのため、「就職で忙しくなる前に・・・」「仕事が忙しくなる前に・・・」「妊娠・出産などの予定の前に・・・」と、時間ができた段階で抜歯をお勧めすることがあります。

③親知らずが生えてきていない場合

親知らずがあごの骨の中に埋まっている状態であれば、親知らずが痛むことは考えにくいです。それでも親知らずがいずれ生えてきたり、隣の歯を押すという可能性や、親知らずが骨の中で大きな袋を作る場合があるなどの理由で親知らずを抜いておいたほうがいい、という考えもあります。

◎親知らずを抜かないほうがいい場合

何かとトラブルの元になるのであれば、親知らずはすべて抜いたほうがいいと考えてしまうかもしれませんが、抜くことがトラブルになることもあるのです。

親知らずの根元付近には血管と神経の管が走っていて、人によってはまれに親知らずの歯の根がその管に触れていたり、はたまた抱え込んでいる場合などがあります。この場合に無理に親知らずを抜いてしまうと、あごのあたりのしびれなどのトラブルになることがあります。

状況によってはそれでも抜いたほうがよい場合もありますので、抜かないほうがいいとは一概には言えませんが、親知らずを抜くと決めた時、どのような危険があるのかを把握したうえで抜いてもらうのがよいでしょう。

インプラントのお話

インプラントに興味のある方、心配のある方がいらっしゃると思います。歯科インプラント治療とはどういうものか、ご紹介してみようと思います。

デンタルインプラント治療は世界的に行われている治療法で、歯のないところをかめるようにする「補綴治療」の手段として非常に有効な治療法です。

世の中には様々な考え方があるため、歯科の先生によっては考え方が違ってくることも出てくるであろう点をご了承ください。

<どういう治療?>

歯のなくなったところに人工の土台を骨に植え込み、人工の歯の支えとする治療法です。

土台とするインプラントの形態は、さまざまなものが考案され、そして多くのものが消えてゆきました。現在インプラント治療で使用されているものは、歯の根の形にねじ切りがついたような「人工歯根タイプ」がほとんどです。

土台のインプラントの材質にもさまざまなものが使われましたが、現在使われているものは「チタン」「チタン合金」が多いです。

現代のインプラント治療は、チタンを骨内に埋め込んでも、体が拒否反応を示すことなく、チタンに密接して骨が治癒する現象(「オッセオインテグレーション」と呼んでいます)を利用しているものが多いです。

その他、セラミックスの材質のものや、チタンのインプラントの表面が骨との親和性の高い材料で膜状に覆われているものもあります。

<元の自分の歯とはどこが違うの?>

天然の歯も、インプラントも、骨に支えられて植わっている点は 変わりません。天然の歯は骨との間に軟らかい線維質の「歯根膜」というものが存在します。そのため、歯はかみ合わせると少し沈むのです。一方、インプラントは骨との間に歯根膜のようなものがなく、直接骨に接しています。そのため、インプラントはかみ合わせた時もほとんど沈みません。

また、歯根膜にはかむ力が加わったときに感じる神経が存在します。そのため、かみ合わせると「今、私はかんでいる」と感じることができます。一方、インプラントはそのような神経がないため、かんでいることを感じるのは周りの自分の歯か、かみ合わせている向かいの歯で感じます。歯が全くない場合でも、あごの関節や噛む筋肉などで感じることができます。

かんだ時の動き方や感じ方が元の歯とは違っているのです。

<どんな種類があるの?>

インプラントというと元の歯に似せて人工の歯を作るイメージが強いかもしれません。実際にはそのような使い方以外にも、取り外しのできる入れ歯の支えに使う場合もあります。状況に応じて、より良い上物を選択することが大事です。

<治療期間?>

インプラントの治療は他の歯の治療と比べると長い時間が必要になります。なぜならインプラントが骨の支えを得るためには、インプラント周りの骨が壊されて新しく作り変えられる必要があり、この「代謝」は徐々に進んでいくためです。人間の体の骨は半年で中身がすべて入れ替わっている、という話があります。そのくらいのスピードで、人間の体の骨は壊されると同時に徐々に新しく作り直されているのです。

近年では、インプラント治療の進歩とともに、条件はありますがさまざまな工夫により即日でインプラント上部の人工の歯を作る治療法も出てきました。ですが、インプラントが骨に固定されるしくみは変わるわけではないのです。

<費用?>

インプラントは、ガンなどの理由であごの骨を切り取ってしまったのちに再建した場合など、ごく限られた場合を除けば保険がききません。そのため基本的に自費の治療となってしまいます。また、きちんとした治療を行うためにはどうしても手間がかかるため、インプラント治療は高額となることが多いのです。(参考:当院では1歯473000円です。歯数が増えると1歯あたりの費用は下がります)

文章ばかりになってしまいましたが、すこしでもインプラント治療のイメージのお役に立てれば幸いです。

最後に…どんな病気でも同じなのですが、治すのは最後はご自身の元気と意識にかかってくるのです。