親知らずとは、前から数えて8番目の歯のことです。
一番奥の奥歯で、第1大臼歯(6歳臼歯)、第2大臼歯(12歳臼歯)の後ろなので第3大臼歯と呼ばれます。口の中に生えてくる時期も10代後半と遅く、親知らずの名前の由来ともなっています。また、親知らず自体がまったく存在しない人もいます。親知らずがあっても口の中に顔を出さないこともあります。親知らずがあるのかないのかはお口全体のレントゲン写真を取ることでわかります。
現代では親知らずが正常に生えて来ない人も多く、また親知らずがなくても、食事がしにくいなどで困ることはあまりありません。
◎親知らずは抜いたほうがよい?
よく、親知らずを抜いたほうがよいという話を聞きます。なぜでしょうか?
①正常に親知らずが生えている場合
正常に親知らずが生えて、上下でしっかりかんで問題のない場合は、特に親知らずを抜く必要はありません。しかしこの場合でも、親知らずがむし歯になった場合など、一番奥の、物の届きにくい場所のために治療が難しく不確実になるため、抜歯が選択肢となる場合があります。奥まっているために、うまく清掃ができずに不潔となり、親知らずだけむし歯が進むケースもよくあります。
②親知らずが変な方向に生えている場合
変な方向に生えて、お口の中に頭を出しているような場合、あまり歯本来の仕事はしていないばかりか、親知らず周りのお口の清掃が大変だったりします。清掃がしにくい結果、周りの歯をむし歯にしてしまったり、親知らず自体が痛む(「智歯周囲炎」)になったりします。
この、親知らず自体が痛んだ場合、基本的には薬で症状を抑えることが多いのですが、放置してしまうと心臓の周囲にまで膿が落ち込んでしまう場合があり、こうなると命の危険にかかわる事態にまでなってしまいかねません。
そのため、そんなことがないようにあらかじめ抜いてしまったり、一度はれたことがあれば、おさまっているうちに抜歯しておく、という選択肢があるのです。まれに、忙しい肝心な時にものすごい腫れ上がる、というケースがあります。そのため、「就職で忙しくなる前に・・・」「仕事が忙しくなる前に・・・」「妊娠・出産などの予定の前に・・・」と、時間ができた段階で抜歯をお勧めすることがあります。
③親知らずが生えてきていない場合
親知らずがあごの骨の中に埋まっている状態であれば、親知らずが痛むことは考えにくいです。それでも親知らずがいずれ生えてきたり、隣の歯を押すという可能性や、親知らずが骨の中で大きな袋を作る場合があるなどの理由で親知らずを抜いておいたほうがいい、という考えもあります。
◎親知らずを抜かないほうがいい場合
何かとトラブルの元になるのであれば、親知らずはすべて抜いたほうがいいと考えてしまうかもしれませんが、抜くことがトラブルになることもあるのです。
親知らずの根元付近には血管と神経の管が走っていて、人によってはまれに親知らずの歯の根がその管に触れていたり、はたまた抱え込んでいる場合などがあります。この場合に無理に親知らずを抜いてしまうと、あごのあたりのしびれなどのトラブルになることがあります。
状況によってはそれでも抜いたほうがよい場合もありますので、抜かないほうがいいとは一概には言えませんが、親知らずを抜くと決めた時、どのような危険があるのかを把握したうえで抜いてもらうのがよいでしょう。