<Covid-19関連トピックス1>

今回は、新型コロナウイルス関連の話題の中で、歯科の重要性を再認識した件についてお伝えしたいと思います。

1.新型コロナウイルスと歯周病
重症化として恐れていたもの

新型コロナウイルス(COVID-19)で警戒されていた重症化・死亡リスクとは「敗血症」でした。

「敗血症」とは、感染に対する制御不能な生体反応が起きて、これが原因となって生命を脅かすような重い臓器障害を起こす病態です。敗血症を引き起こす要因は、「原因となる病原体」と「(病態を装飾する)人体側の炎症反応」です。

重症化を防ぐために

これに対して新型コロナウイルス感染による敗血症を防ぐためには、以下の3つの項目の制御・コントロールを行うことが有効です。

  1.初期の感染ウイルス量

  2.コロナウイルス以外の感染

  3.免疫に悪影響のある基礎疾患

これらの内容はコロナウイルスに限らず、一般的に感染症から体を守るための要素をあらわしている、とも言えます。

各項目についてもう少し具体的に見ていきます。

  1. 「初曝露時のウイルス量が多い」「初期免疫(自然免疫)の活性度が低い」とウイルス血症を生じる可能性が高まります。感染初期(つまり、既感染やワクチンなどでの獲得免疫がない時期)に血中で「ウイルス血症」を生じると、重症化の可能性が高まります。
  2. コロナウイルス感染の症状についてさまざまな報道がなされましたが、他の病原体との複合感染を原因とする症状も少なくなかったと思われます。様々な感染によって引き起こされる炎症の積み重ねは、何かのきっかけ(初感染ウイルスの増殖への反応など)によって強烈な炎症反応を起こしえます。
  3. 高脂血症(肥満)は、肝臓の血中ウイルスの処理を停滞させてしまいます。糖尿病は万病のもとであり、体のすべての細胞の元気がなくなります。免疫機能や免疫細胞も弱りますので、「病原体の感染」への抵抗が弱まります。その他にも、様々な原因で免疫力が低下している状態は、重症化に注意が必要です。
歯周病と感染症や疾病との関係

ここで、上記に関係してくるものとして「歯周病原因菌」が挙げられます。これが、今回の話題のキーポイントです。

コロナウイルスはお口の中の粘膜表面の細胞にも感染して増殖することができます。歯周病の進行した歯ぐきの歯周ポケット(歯周病原因菌が存在する)では、コロナウイルスの感染・増殖が促進される、という報告があります。

また、歯周病原因菌の産生するエンドトキシン等が、重度歯周病では血管内に入り、血管内で炎症反応への悪影響を与えます。さきの敗血症の原因である炎症反応の重篤化の引き金になっている可能性も考えられます。

以前より、歯周病の病態と糖尿病は、お互いの改善と悪化に相関があるといわれています。また、心臓や血管の病気とも相関があるのではないかともいわれています(患部から歯周病原因菌が検出されるためです)。今回の話題では、歯周病が他の病原体への感染にも影響している可能性が高いことが示されました。 全身への影響は思っていたよりもさらに大きいようなのです。

歯周病のコントロールが全身の健康を保つうえで重要であることが、さまざまな形で浮かび上がってきていると思います。歯周病はケア・コントロールしていない場合、広い面積にわたる重篤な感染症になり得ます(手のひらサイズの潰瘍(かいよう)!)。歯周病を積極的にコントロールすることで、歯周病原因菌は大きく減少させることができます。

歯がなければ食物の咀嚼効率は落ちます。栄養摂取の能率が落ちますから、長い目で見て全身の健康度に影響します。しかし、歯が残っていても、歯周病の管理ができていない場合は、やはり全身の健康に影響があるのです。

最近政府から示された全員が歯科健診を受けるという発想は、生涯現役という方針を支える重要な柱である、と推察できます。

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